2011年07月19日

映画:Biutiful ビューティフル


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ボクが今一番ハマっている俳優さん。この写真のスペインの
ハビエル・バルディム
あの同じスペインが誇る美人女優さん、ペネロペ・クルスの旦那
さんでもあります。

彼の前はジョニー・デップでありましたが、最近ジョニーがやわな
作品しか出て来ないので、もうハビエルに鞍替え(笑)

恐らく今一番世界で実力のある演技派俳優さんではないかしら。
彼のつい最近のウッディ・アレン監督の「それでも恋するバルセロナ
では、軽妙な、そしてちょっぴり陰のある不思議系の画家を見事に
演じきっていましたが。

今回彼が演じるのは精神を病んだ妻と離婚し、二人の子供を育て
ながらバルセロナの街角でアフリカ系の人間を使い偽ブランド商品
の元締め稼業のやさぐれ者という役。

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どちらかというと、世間からドロップアウトした人間ですが、それでも子供
への接し方は厳格なオヤジで、使っているアフリカ人やら偽ブランド品を
造っている中国人には彼なりの思いやりを持つ、いわば人のいい小悪人
の役柄であります。

「恋するバルセロナ」がバルセロナのハイソな、ちょっと捻れた、ある意味
ダリの絵画を見るような世界を描いているのに対し、この映画はあの
ボク等が持っている華やかなイメージと対極のバルセロナの姿が描かれ
ます。

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彼は彼なりの毎日の生活を、子供たちと一緒に過ごしていくのですが、
ある日体調に異変が。そして病院で余命数カ月というガンの宣告を受
けて。

そしてこの宣告を受けてから彼の生活と彼を取り巻く環境がどんどん
悪い方向に変化して。映画はその変化の波とその波に飲み込まれる
彼の姿を丹念に抑制の効いた筆致で描いていきます。死の恐怖と
戦いながらも子供を護り、別れた妻との関係修復に努力し、生活の
糧であるシノギ稼業の仲間達に襲いかかる数々の悲劇に必死に対応
する彼の姿。


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そして最後に彼は病魔に負けるのですが。更に負けた上に信頼した
仲間に裏切られるという更なる悲劇も・・・

ここに描かれるのは貧しさ故の様々な死と、貧しさ故にその運命から
逃れられない人々の生活。そう、貧しい者はやはり貧しく死んでいくと
いう不条理の世界。でも、それでも人は生きるために生きるという命題
が強く太くこの映画を支えています。

監督はアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。あの傑作「バベル」の
監督ですが、彼は大の黒沢明監督のファン。この映画も黒沢作品の
生きる」を下敷きにしており、まさに黒沢映画のオマージュ。

さて、肝心のハビエルですが。相変わらずうまいですね。この難解な
映画を演じきるのは彼しかいないという思いが観終わってしました。
最後のシーンの彼の表情なんて!痺れるなぁ!!(上の写真)

生きていることの桎梏から解き放たれた人間の表情がここにあります。
それまでの表情との明暗の違い。ここまで演技を発揮出来る役者は
世界でもそういないでしょう。

でも、ボクの中の彼の最高傑作は「海を飛ぶ夢」。残念ながらこの
作品の微細な陰影を表現した演技は超えなかったなぁ。こちらは
自殺を禁じるカトリックの国で、自殺を希望し、見事それを成し遂げた
ある実在した人間の半生を描いた作品です。ボクはこれを観終わった
時に数分間立ち上がれませんでした。多分DVD化されていると思い
ますので、是非これはご覧下さい。かなりショックを受けますよ。

尚、ハビエルはこの映画で今年のアカデミー主演男優賞にノミネート
されています。

あ、それと表題の英語のスペルがおかしいんじゃないかと気付かれた
方。鋭い観察です。でも、これが正しい映画の題名です。この題名は
主人公が子供に英語を教えている場面があって、彼がミススペルを
教えたのがこの「Biutiful」なんです(笑)


■この映画の評価:★★★★★
 (★五つが最高評価)


■2010年スペイン・メキシコ合作映画
■カンヌ映画祭主演男優賞受賞作品


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Phoenix 東北&関東
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2011年07月02日

映画:アンダルシア 女神の報復


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アンダルシア」と聞いたら、スペイン・フリークのボクとしては行かざるを
得ません(笑)

織田裕二の新シリーズ、「女神の報酬 外交官 黒田悠作」の二作目に
なるんでしょうか(第一作は未見ですが)。あのサラ・ブライトマン
Time to say good-byはエンディング・テーマに今回も使用されて。

映画の発端はパリで行われた蔵相会議。日本はマネー・ロンダリング規制
強化策を提案という、なんとも国際的な舞台から。今更、マネー・ロンダリング
規制と言うのも如何なものかとは思うのですけど・・・

そして舞台は南に飛びフランス国境近くピレーネ山脈の小国、アンドラ公国
へと。この国、実は昨年のスペイン紀行で一度は予定に組んでいたところ。
例のアイスランドの火山爆発の煽りを受けて、時間がなくなり断念した国で
あります。

不思議な国で、元々はフランスとスペインの共同統治国。独立は1993年。
ピレーネ山脈に位置するため、アルペン・スキーやら登山のメッカでもあり、
フランス・スペインからすると輸入品が免税で買えるという点が受けて、
ショッピングのメッカでもあります。

映画はこのスキー場で起こった日本人殺害事件。この事件に絡む謎の
女性を黒木メイサが演じます。殺害されたのが日本の警視総監の息子と
いうこともあり、急遽主人公の黒田康作が派遣されて。ここから映画は
ジェットコースター映画となり、テンポよく事件のなぞ解きが始まります。

それにしてもかなりコアーなアンドラ公国を舞台に持って来たとは、この
映画の制作者、監督のセンスが窺われます。


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主人公に絡むのは既述の黒木メイサとこの事件の解明に当たるインター
ポールの過去に影ある刑事を伊東英明が。そして何故か福山雅治が
怪しいルポライター役で登場(映画の内容と全くと言ってよいほど絡まない
のがとても笑えるんですが)。この人の呆けた演技は多分地?(爆)

そして事件の第一発見者である黒木メイサに忍び寄る魔手が。邦人保護
のため彼女を追う黒田と殺人の嫌疑でこれを追う刑事。そして舞台はバル
セロナへ、更に題名にもあるアンダルシアロンダへ。

アンダルシアの画面は空撮を多用していますが、なかなか素晴らしいカメラ
・ワークであります。4年前の旅の思い出がまざまざと蘇って来ました。
映画の後半でフラメンコのシーンがありますが、歌手と踊り子の顔を見て
びっくり。
映画の設定はロンダとなっていますが、これはセビリアの超有名な伝統的
フラメンコの踊り子と歌手であります。特徴ある顔立ちなので、直ぐに思い
出した次第。

映画のプロットは最初に申し上げた通り、ジェットコースター映画ですので
かなり粗いんですが、それはそれ、観光映画として結構楽しめます。

織田君がかなり貫禄が出てきましたね。演技もかなりいいです。ボク個人と
しては是非悪役に挑戦してほしいなぁ。競演の黒木メイサ、脚本が粗いので
人物設定が良く分からないという難点があったせいでしょうか、ちょっとイマ
イチな感があります。

それとバルセロナの街角でロケが多いのですけど、ちょっとどこの都市なの
か分からぬような平凡な絵が多かったのは残念。アクション・シーンです
ので種々規制があったにせよ、ちょっとロケハンが戴けません。それと
カタルーニャのバルセロナの時間がが結構多かったような。アンダルシアは
他にももっといいロケハン場所があるんだけどなぁ・・・

然し、それにしても日本人俳優が英語やらスペイン語を喋って様になる
映画がやっとできるようになったんですね。あの難しいスペイン語を覚える
だけでも大変でしたでしょう。

映画のラストで次回作を暗示する言葉が出てきましたが、なんとドバイ
ですって。
あのアラブの世界で、あの建築博物館みたいな国でロケですか。アラブ
第二の故郷のボクとしてはまた観に行かねばなりませぬ(笑)


この映画の評価:★★★★☆
 (★五つが最高評価)


 出演者が英語・スペイン語をそれらしく喋ったということで★ひとつ
 おまけです(笑)


(おまけそのに)

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ロンダのローマ橋
(こんなところに良く作ったもんだ!)

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翌日大雨の中の撮影でした
滝つぼ近くまで降りて行ってその凄まじさに絶句
危険を感じ慌てて逃げたですよ(笑)



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Phoenix 東北&関東
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2011年02月27日

試写会:唐山大地震


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文化大革命の最中、20世紀の希有な悲劇となった「唐山大地震」。
映画はこの大地震に見舞われた四人家族がその後辿る数奇な運命を
描きます。

父親は奥さんを護るため死に、二人の二卵生双生児の子どもは瓦礫
の下に。その救助の際に、母親は子どもを助けるためには一人を選択
せよとの厳命のもと、娘を捨て息子をとるという究極の選択を。

助かった息子は片腕を失うという運命が。そして母親の自分を捨てる
という選択の声を聞いていた娘は死体置き場で打ち捨てられるのですが、
その後なんと奇跡的に蘇生。
そして災害の混乱下、娘は援助で唐山に来ていた人民解放軍の
夫妻に貰われて、残った家族三人はそれぞれのトラウマを抱えた
ままその後の人生を送ることに。

そして、二卵生双生児の波乱の人生が描かれ、娘を捨てた母親の
苦悩・苦労が続くのですが、それが最近起こってまだ記憶に新しい
四川大地震の惨状へと、物語の大円団へと繋がっていきます。


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さて、このボク等には馴染みの少ない「唐山大地震」。これは1976年
7月26日。この時代の中国は文化大革命の渦の中です。

唐山大地震の規模はマグニチュード7.8。当時中国で最大の工業都市
は一夜にして瓦礫の山に。死者は24万人強と言われました。

この文化大革命の最中というのが不幸を増大したのだとボクは思い
ます。当時の中国政府はこの大地震を世界に発信していません。
更にその時点での世界各国からの援助申し出も、自立のためという大義
で頑なに断っています。これが、被害を拡大させたということは明白であり、
現場は何故か10年近くに亘り外国人の立ち入り禁止と言う異常な状態が
続きました。

恐らくその反省から四川大地震の際はあの反日運動の激しい中、中国
としては珍しく日本の救助隊を受け入れる等、世界からの援助を容認
しました。

残念ながら(当然のことながら)、この辺りの事情は恐らく中国国内では
広く情報が行きわたってはいないでしょうね。その代り映画の中では、救助
の中心であった人民解放軍は英雄として扱われ、その象徴としてワンカット
ですが毛沢東の国葬のシーンが印象的に流されています。


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映画自体は大地震というクリティカルな状況と、その後のトラウマを抱えた
家族とそれを取り巻く人間模様を上手に写していきます。このストーリー
・テラーぶりとカットのうまさにこの監督の非凡な才能を十分感じさせ
られます。

この映画、中国では2000万人を動員したそうで、流行語として
「催涙弾」映画という言葉ができたそうです。
まぁ、泣かせる材料は揃っています。ましてニュージーランドでの
今回の災害もあり、同時進行形の悲劇がオーバーラップして、この種の
映画なら日本でも皆さん必ず涙を流すでしょう。



でも、この映画の最大の弱点。残された家族3人がそれぞれ蒙った
トラウマのもととなった原点ともなるシーン。



冒頭に書いた瓦礫の下にいる瀕死の子供に聞こえるくらいの大声で
母親に両方は助けられない、ならどちらを救出するかと問いただす設定は
如何なものかしら。

国民性の違いなのかなぁ。日本ではこういうシツエーションは多分作ら
ないと思うのは極限状態を知らぬボクの甘さですかねぇ。

いくら物語でもそりゃないだろうと。残念ながら映画の冒頭でボクは
完全に引いてしまいました。というか、ずっとこういう場合の救助の在り
方ってなんだろうと考えちゃったりして。

どちらを救うか」とはこの場合「どちらを殺すか」というのと同義。これ
こそハーバードの「熱血授業」で取り上げてほしい命題であります。
ということで、ボクは映画の殆どは救助の在り方と母親の選択肢について
あれやこれや考えて映画に没頭出来なかったじゃないかっ(爆)


映画は虚構ではありますが、それにしてもプロットの作り込みはもっと
丁寧にやって欲しいなぁと、題材が題材だけに強く感じた次第です。
まぁ、官製のお涙映画の限界みたいなものを感じたりしちゃうんですけど。


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この映画の評価:★★★☆☆
(★五つが最高評価)

制作年:2010年
制作国:中国
日本公開:2011年3月




posted by belage at 16:59| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | FILM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月12日

試写会:Hereafter(ヒアアフター)


クリント・イーストウッドがまたまた放つ感動巨編。

この方いまお幾つなんでしょう。もう80歳くらいになられていると
思いますが、ここ数年は「硫黄島からの手紙」に始まり、最新作
インビクタス」と数々の感動作品を立て続けに連発。いずれも
アカデミー賞を取ってもおかしくないという力作ばかり。この飽く
なき制作意欲とその質の高さに驚かされます。

そして今回のこの作品。題材が「臨死」状態での「あちらの世界」
を真正面から取り上げています。ややもすると、全く否定も肯定も
出来ないテーマだけに、扱いを間違えると単なる「際もの」扱い
される題材ですが、この監督の力量で見事なヒューマニズム
映画になっています。

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映画は恐らくスマトラ沖地震のあの津波の恐怖のシーンから。この
冒頭の映像は圧巻。過去にパニック映画で津波シーンは数々あり
ますが、現実にTVで何回も放映された被災者が写した実写と同じ
シーンが展開され、妙に説得力がある映像になっています。この
ヒロインはここで仮死状態、臨死を経験するのですが。彼女はフラ
ンス人で物語はパリで進みます。

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更に物語はロンドンに展開し、この二人は双子の兄弟。この兄に起きる
不幸と死んだ兄を慕う弟の葛藤が描かれていきます。マクラレン兄弟。
この子たちが見せる演技も秀逸です。

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更に「インビクダス」でイーストウッド組に新規参入したあのマット・ディモン
彼はサンフランシスコ在住の引退した霊媒師。他人の過去が分かって
しまうが故の苦悩を、マットが押さえた演技で好演しています。この人
アクションスターとして大成しましたが、こういう性格俳優としても十分
いけますね。

物語は以上のパリ・ロンドン・シスコで個別に淡々と語られていきます。
そしてラストに上記の三人がロンドンで一同に会する訳ですが。そこに
至るまでのデテールの描き方が流石巨匠と唸らせます。かなり綿密に
練られた脚本の成果があります。

とっても微妙な題材でありますが、特にキリスト教が中心の欧米では臨死
って受け容れられるような題材ではないと思うのですが、この三人を結ぶ
色々な意味の「愛」というものが根底に流れており、それが見ている者の
心に響きます。ボク自身何故か分からないのですが、映画の後半部分から
目がうるうるになってしまいました(苦笑)



ヒロイン役のセシル・ド・フランス。ベルギー出身だそうです。フランス語は
勿論ですが、きれいな英語を喋る方です。ちょっとアンニュイな雰囲気の
あるいい女優さんです。そして双子の子役、マクラレン兄弟。弟役の演技
は見ものです。



この映画、もしかしてまたイーストウッドのアカデミー賞があり得るような。
但し、この臨死というテーマがキリスト教から見て受け容れられるかが
若干疑問ではありますが。
ややもすると、こういうテーマってオカルト的なとんでも映画になる可能性
がありますが、監督の力量でとってもスマートに仕上がっています。ボクは
これはあの「硫黄島からの手紙」で日米両方からあの戦争を描くという、
イーストウッドの優れたバランス感覚がなせる業だと念っています。
旺盛な彼の制作意欲。これからも元気でまた新たな作品に挑戦して
貰えると期待が募ります。



この映画の評価:★★★★★(★五つが最高評価)

制作年:2010年
制作国:米国
日本公開:2011年2月19日





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2010年12月20日

映画:「最後の忠臣蔵」


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日本人の心の故郷と言える「忠臣蔵」。四十七士の赤穂浪人であったはずが、
実は一人が仇討実行前に脱落し、一人が討ち入り後逐電というのが史実。
その謎に迫った池宮彰一郎原作の同名小説の映画化。

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討ち入り前に脱落したのは瀬尾孫左衛門で映画では役所広司が、討ち入り後、
泉岳寺から逐電した寺坂吉衛門を佐藤浩市が演じています。主演は役所広司
ですが、佐藤浩市はいわば「道化回し」的存在。

討ち入りというと当時の徳川幕府の屋台骨を揺るがすようなテロ事件でありましたが、
その後切腹という武士の名誉を棄損させぬような、いわば大岡裁き的な幕府の計らい
で、赤穂浪士は武士の鑑として一躍人気者に。

一方、メンバーに選出されながら出場拒否と見られた孫左衛門と切腹を前に
逐電した吉衛門の二人の討ち入り後の人生は如何に辛酸を極めたかは、現代
に生きるボク等でも想像に難くありません。


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何故、この二人が武士の理(ことわり)を拒否して一番の華といえる「死」の道を
放棄したのか、その謎を作家池宮は首謀者大石内蔵助からの二人に託した
密命ということで解を与えています。
この辺りは彼の小説乃至はこの映画でなぞ解きを楽しんで貰いたいのですが。

映画は佐藤浩市演じる寺坂吉衛門の目と行動を通じて、主人公の孫左衛門の
心の葛藤を描いていきます。監督杉田成道はここでもう一つの「道化回し」役
として当時の人気芸能であった人形浄瑠璃の近松もの「曽根崎心中」を持って
きています。この浄瑠璃のシーンの映像は素晴らしいです。この場面が繰り返し
登場することにより、映画のラストシーンに繋がる重要な伏線になっているの
ですが・・・

惜しむらくは道化回しが吉衛門と人形浄瑠璃の二本立てになってしまい、ボク等
観客の思考の妨げになったのも事実。また人形浄瑠璃との対比で逆にどうしても
吉衛門のセリフが説明的になってしまったこと。更に言えば人情ものの「死」と
忠義のための「殉死」が同列に扱われてしまう危険性があること。

映画全般を通じて言うと、役所の演技が光っています。脇の伊武雅刀もいい
演技見せてますね。ボクは久し振りに大好きな田中邦衛がひょっこり顔を
出してくれたのが嬉しかった。

特に最後のシーンのカメラワークは素晴らしい。佐藤浩一が部屋の襖を倒す
場面がありますが、カメラの視点が急に上からの俯瞰に切り替わるシーン。
これは特筆ものです。倒れた襖の角度がまたいいんだなぁ。フォービズムの
絵画を見るような。観客のこっちが刀で切られたように覚えました。

え〜と、映画終了後、場内では涙で鼻をすする音が結構してました。特に男性の
観客に多かったと思います。残念ながらボクはそこまで感情移入は出来ません
でした。理由はそれぞれの登場人物の心の葛藤が描き切れていないところ。

それと本質とは外れますが、ラスト近くで役所広司がヒロインに声を出さずに
口をあけて別れの挨拶をするのですが、その口パクを見て、ボクは不謹慎な
ことに「ダイワ・ハウチュ」の一言が頭の中に響いて(爆)

やはり映画スターはTVのCM出演はよくよく考えたほうがいいのではと実感
した次第。


この映画の評価:★★★☆☆(★五つが最高評価)

■監督:杉田成道
■原作:池宮彰一郎
■出演:役所広司・佐藤浩市・桜庭ななみ・片岡仁左衛門他
■制作:2010年 日本(ワーナー・ブラザーズ配給)


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2010年11月10日

映画:ノーウエアボーイ ひとりぼっちのあいつ




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歌ってなんかいなかった。愛を叫んでいたんだ




ビートルズ世代のボクとしては外せない映画。ビートルズのリーダーでありビートルズ
解散後凶弾に倒れたジョン・レノンの若き日の苦悩とビートルズ誕生秘話を綴る青春
映画。今年はレノン生誕70周年。凶弾に倒れてから40周年。世界に愛を叫んだ
ビートルズのリーダー、ジョン・レノンの秘話がこの映画で。



これを見てびっくりしたのが、ジョンに文字通りの産みの親と育ての親の二人がいたこと。
今初めて明かされるビートルズ草創期の秘話ということになります。そしてこの映画の
題となった「ノーウエエア・ボーイ(Nowhere Boy)」はジョンの初期の名作「ノーウエアマン
(Nowhereman)」から採られたことは明白。

この歌を初めて聞いたときはボクが中学生か高校1年生の頃。「Nowhere」は辞書を
引くと「どこにもいない」「どこにもない」という意味ですが、はてどうして「ひとりぼっちの
あいつ」という訳詞がつけられたのか英語もロクに出来なかったボクには全く理解できな
かった思い出のある曲でした。
今多少英語の知識も出来たところで改めて歌詞を紐解くと、素晴らしい名訳です。
これと似たニュアンスの曲にビートルズ終盤の時代の傑作「フール・オン・ザ・ヒル
(Fool On The Hill)」がありますが、これと併せて聴くとジョンの心象風景が垣間見える
ような気がします。

そして映画で暴露されたジョンの少年時代の母親に纏わる心の傷。この映画を観て彼
の楽曲の成り立ちみたいなものの一端が理解できたような。
産みの母親の実態を知り、不良少年になっていくジョン。但し、当時ボク等の世代の
共通点であったかと思うのですが、徹底した「ワル」ではありません。今でもよく見られる
「チョイワル」程度の「悪(ワル)」。ビートルズデビュー当時からTV映像は殆ど見ていま
すが、ジョンだけ何か他三人とは違う斜に構えた様子が、この映画を見て納得され
ました。

ジョンの人生の音楽デビューの切っ掛けが何とバンジョーであったとは!これ
は驚き以外の何者でもありません。そしてバンドを組んで暫くして参加したポール・
マッカートニー(これがいまで言う育ちの良い「ボン」)にギターを習ったとは。更に最初の
音楽デビューがアコースティック・ギターだけのバンドであったとは!!全然知らな
かった秘話が展開され大変大変興味深いストーリーです。

難を言えばボク個人としてはどの時点でエレキ・ギター中心のバンドになったのか、
その経緯が知りたかったし、ビートルズの聖地リバプールの港町の情景をもっと
活写して欲しかったという恨みは残ります。でも、それがこの映画の良さを損なって
いるという意味ではありません。

何れにしてもビートルズファンは勿論、その歴史を知らない若い世代も観て置きたい
作品です。


■この映画の評価:★★★★☆
(★五つが最高評価)

監督:サム・テイラー=ウッド
主演:クリスティン・スコット・テイラー他
制作:2009年英・米制作


(尚、監督と主演男優テイラーとの超年齢差結婚でも話題を撒いていたのも興味
深いですが・・・)


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2010年10月28日

試写会:武士の家計簿


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数年前にベストセラーとなった磯田道史著「武士の家計簿」の映画化作品。
本著は著者が偶然古本屋で発見した幕末から明治初期に亘る加賀藩の
御算用者」と呼ばれた会計掛の猪山家が四代に亘りほぼ毎日30数余年
付けていた家計簿と、その後収集した書簡集を基に幕末から明治維新の
激動期を生きた下級武士の生活を活写したものであります。

映画は久しぶりにメガホンを取った森田芳光監督が、彼らしいウイットに
富んだ演出でテンポ良く進んで行きます。前作の「椿三十郎」がミスキャスト
に負う所が多いと思うのですが全くの空振りであったことを思うと、今作は
遥かにいい出来です。


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主演の堺雅人はまさにはまり役。彼の滲み出る人柄が役にぴったりで、
共演の中村雅俊、西村雅彦、松坂慶子、草笛光子の芸達者たちががっちり
脇を固めて、それぞれのシーンを飽きさせません。ヒロインの仲間由紀恵も
普段見る演技と違い、かなり抑え気味の演技で新境地を作り始めたのかな
と思います。更に磨きをかけるといい役者さんになれそうです。

テーマは現代と対比される幕末・明治維新という激動期。その中で経済的
に行き詰まった猪山家が如何に巨額の借金を返済し、「」の危急を救った
かであります。主人公が取った道は現代の多重債務者が救済される途と
全く同じ手法。この映画を見て経済行為というものは普遍なものがあると
感心した次第。

今年の邦画界の下半期はは時代劇の注目作が目白押しですが、その中
でもこの作品は異彩を放つテーマで注目株。現代の貧困層の増大という
日本経済を見直す意味でも価値ある作品で、グドタイミングのリリースで
あります。ダラ菅ならぬ菅総理やら柳腰のマカオ官房長官には是非観て
欲しい作品です。




この映画の評価:★★★★☆(★五つが最高評価)

■監督:森田芳光 出演:堺雅人・仲間由紀恵・松坂慶子・西村雅彦・草笛光子・中村雅俊他
■上映封切り:2010年12月14日より

posted by belage at 17:15| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | FILM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月31日

映画:おにいちゃんのハナビ


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今度注目の映画
高村薫原作のベストセラー「マークスの山」で
マークス役を演ずることになった高良健吾クンが主演の映画
この映画ではヒッキー役を無難にこなして

競演は高良クンの妹役で谷村美月
脇は大杉漣と宮崎美子の芸達者で固め

設定は白血病の妹と
彼女の療養のために新潟の小さな町に引越し
環境変化に対応できずヒッキーになった兄

とくればこれはもう今流行の「泣き映画」
どんなに抵抗しても涙は必定と
映画の惹起を読んだだけで分かってしまうのですが


あはは
海千山千のボクのようなおじさんも

やはり泣いてしまった(苦笑)




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健気な妹役の谷村美月は突き抜けた明るい演技で
母親役の宮崎美子もこれまた明るく
妹の死という悲劇とのコントラストをうまく醸しだしています

この明るさ
余り強調しすぎると漫画になっちゃいますが
谷村さんの演技がぎりぎりで抑えられて好感が持てます


全体的に見て
登場人物の心の動き等のデテールが
描ききれていないという恨みはありますが
泣きたい人には大変嬉しい映画でしょう

主演の高良クン
久々のイケメン俳優さん
もしかしたらヒッキーは地なんじゃないかと思ったくらい(笑)
これが演技なら将来が楽しみな俳優さんです




この映画を見て驚いたことが

舞台は新潟の「片貝まつり」を題材にしていますが
地元の方が自分でお金を出して
願い事やお祝い事等の記念・祈念で花火を打ち上げるんですって
なかなか面白い習慣です

それと
携帯電話メールでもこのブログと同様に予定投稿ができるんですね
(知らないのはボクだけだったりして)
これは映画の大きなネタなので詳しくは書けませんが
実際にあのシチュエーションで受け取ったら
辛いものがあるなぁ



この映画の評価
★★★☆☆


(爽やかに泣きたい人には絶対オススメ)




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2007年07月11日

映画(DVD) :知りすぎていた男


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アルフレッド・ヒッチコックの名作、1956年度制作作品。主役に
ジェームズ・スチュワートとドリス・デイという当時の二大俳優を
配して、モロッコを舞台に描くサスペンス。ジェームズ・
スチュワートというと私は西部劇の如何にもアメリカンという
イメージが強いのですが。ドリス・デイは今ほど女性が強くなかった
頃のよきアメリカ女性の代表。良妻賢母型の代表でしょうか。英国
人のヒッチコックがメガホンを握っているだけあって、この典型
アメリカ人を結構皮肉っぽく揶揄しているような場面があって、
そういう見方をしていると面白い映画です。

あの有名な主題歌、「ケセラ・セラ」をドリス・デイが熱唱。この
唄が最後のシーンのどんでん返しに繋がるという、なんとも洒落た
落ちになっています。ヒッチコック作品としてはコメディ・タッチ
のスリラーに属すものでしょうか。

舞台は先に述べたようにモロッコは第三の都市、マラケシュという
観光都市が舞台。そこの広場で殺人事件が起こるのですが、つい
数日前にTVの旅行番組でこの広場の特集をやっていましたが、景色
というか市の様子、大道芸人の出し物が現代と全く変わっていない
のにびっくり。やはりアラブ(アフリカ大陸ですが)の世界の時間
軸は違うなと感じた次第です。

プロット自体はヒッチコック映画の中では、それほど緊張感がある
作品ではありませんが、やはり構成力が素晴らしい。現代でも十分
通用するサスペンス映画になっています。然し、昔の映画ですが、
テンポが意外と速いのに逆に驚きを感じたりして。やはりしっかり
した脚本と監督の采配というのはいつの時代でも通用するんだと
改めて感心しました。

主題曲の「ケセラ・セラ」。私はてっきりギリシャ語あたりじゃ
ないかと学生時代思っていたのですが。どうやらスペイン語の
ようです。というのもスペイン語でこんな表現はないようなん
です。フランス語でもないし。色々ネットを調べてみたら、
ネイティブでない人のスペイン語の誤訳という説が有力だそう
です。凄いですが、それがヒット曲になって世界を席捲しちゃう
んだから(笑)

ところで、この映画でもヒッチコックの出演場面が分かりません
でした。むむ、どこに隠れていたんだろう?悔しいな・・・


■この映画の評価:★★★☆☆
 (★五つが最高評価)





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2007年07月07日

映画(DVD) :ロミオ&ジュリエット


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いやぁ、痺れたですね。もう、痺れすぎて開いた口が塞がらない
(笑)

何と表現すればいいんだろう、この映画・・・

え〜と、言うなればNHKが売出し中のジャニーズタレントともーむす
の適当に可愛らしい女の子を使って新しい歴史解釈をした古典の
再現という表現かな。

兎も角、ディカプリオ・ファンには嬉しい一本でしょうね。何せ、
ジュリエット役の女の子は余り可愛くないし、出てくる男どもは
皆中途半端だしということで、安心してレオ様を見ていられる(爆)

1996年制作作品でありますので、この翌年の1997年に不朽の名作
タイタニック」が公開される訳で、レオ様が如何に成長してあの
作品に出ていらっしゃったかが凄いよく判る。その意味で貴重な
作品であります(はは、なかなか褒め言葉が見つからない。苦しい)

それにしても、レオ様の映画って相手の女優さんに恵まれないと
いうか、選んでいないというか。やはりレオ様大事という主義なん
でしょうね。絶対に彼を食うような美人或いはうまい役者さんて
出てこないですよね。タイタニックにしても、相手役のケイト・
ウィンスレットって貴族の娘には見えなくて、年増が年端の行かぬ
男の子を誘惑したようなイメージだし(失礼、爆)

ああ、それにしてもウエスト・サイド・ストーリーの何と素晴らし
かったことか。シェイクスピアの現代物として、この作品を超える
ものは恐らくもう出てこないでしょうね。

この映画も多分にウエスト・サイドを意識しているんだけど、台詞
は古典をそのまま引用したりして、とっても設定した時代背景と
合わなくて、もう気持ち悪くなってしまう。唯一の救いはやはり
レオ様のあの憂いを帯びた瞳のみという、素晴らしい駄作であり
ます。

監督はかなりシェイクスピアの原典に沿って作品構成を行っていま
すが、時代を現代(或いは近未来)としたため、却って窮屈さを
覚えてしまう。無理を生じたということなんでしょうね。特に、
ジュリエットの最期はロメオの短剣の代わりに、レオ様の大型拳銃
となってしまうのが興醒め。はい、あの口径の銃で撃つと頭は
半分なくなってしまうんじゃないかと余計な心配をしたりして。

それと画面が汚い。ショットの構成が良くないんだな。パンクな
ところを狙ったような気もするけど、完全に消化不良。才走った
というか、奇をてらったというか・・・


■この映画の評価:★★☆☆☆
 (★五つが最高評価)




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2007年07月04日

映画(DVD) : ベニスに死す


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いやぁ、とんでもない映画を観てしまいました。
ただでさえ難解と言われる ルキノ・ヴィスコンティ監督の1971年
制作映画。原作はご存知トーマス・マンの同名小説。

なにせ、3月にイタリアに行ってから、なにかその繋がりがあると
目を通さずにいられません(笑)

不思議なことにドイツ文学ってヘルマン・ヘッセ以外は余り読んだ
ことがない。何か硬いというか、難解さがあって、非常にとっつき
にくいんです。

この映画を観て、しょうがなくて小説を読みましたよ。ぎゃは、映画
と同じ。これもよく判らん(笑)

物語は老境に入った著名な作曲家が保養のためにヴェネチアに過し、
そこで出会った絶世の美少年(はは、変な表現ですが、一番あって
いる)と同じホテルで出会い、彼を凝視めるその姿を淡々と綴った
作品です。兎も角筋らしいものはなく、唯一あるのはベネチアの街
自体がコレラに冒されたということだけ。

老作曲家の憧憬の対象となるのが写真の少年。何とセーラー服が
よく似合う。おまけに水着が昔の話ですからワンピース。いやぁ、
なんとも悩ましい。確かに美少年であります。これが女性であれば
私も夢中になるんですが(爆)

美少年好きにはたまらないでしょうね。この彼が画面の中で何とも
悩ましい表情をするんです。勿論、美人、美男子というのはとって
もお得で、全然嫌らしさが感じられないというのは凄い。もう、お
すぎなんかが観たらぴーぴーぎゃーぎゃー煩いでしょうね(笑)
恐らく、これは日本人では表現できないんじゃないかな。中性の
魔力ってなかなか表現出来ないもの、日本人では。

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冗談はさて置いて、一体この映画は何を言いたかったのか。

ひとつは美少年愛好者には男女ともに満足できる映画でしょうね。
少女ではなくて少年の持つエロスを堪能できることは間違いありま
せん。それも映画の醍醐味でしょうね。

実は私が感じたのは年取った男の悲哀かな。才能も枯れ果て、肉体的
にも衰えを感じた時に、輝くばかりの美と絶対的な若さ。これが
強ければ強いほど、自分の末期を、自分の醜さを実感してしまう。

主人公は最後に病魔に犯され死んで行くのですが、ラストでは老醜
を隠すために化粧までして少年を追います。そこには自分が失った
才能と若さに対する憧憬と朽ちて行く自分への不安がない交ぜに
なっている。

ベニスという不思議都市を背景に死の恐怖を謳った映画だと私は
解釈したのですが。恐らくこの映画を若い時に観たら全く違った
思いを抱いたことでしょう。ヴィスコンティ監督の生死観という
ものを垣間見たと思います。

話は変わって、イタリア旅行記で和辻哲郎さんのお話をしました。
和辻哲郎のヴェネチア
彼はこのヴェネチアでマラリアに冒されたと紀行記に書いています。
トーマス・マンは伝染病です。どうも現代の我々が抱くヴェネチア
のイメージと数百年前のイメージはかなり違いがあるようです。
時に「魔都」と書かれている意味が判った様な気がします。港町の
持つ宿命なんでしょうね。

ところで、今では殆どの地図、旅行関係書の表記はヴェネチアに
なっていますが、やはりこの題名は「ベニス」でしょうね。
「ヴェネチアに死す」ではなんとなく様にならない感じがします。

■この映画の評価:★★★☆☆
 (★五つが最高評価)



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2007年06月28日

映画(DVD): ブロウ


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何とジョニー・デップと美人女優 ペネロペ・クルスが競演した映画
ってあったんですね。たまたま、レンタル・ショップで見つけて
速攻で借りてきました。奥様が両方のファンなもので。

2001年の制作作品。時代は1970年代、場所はカリフォルニアはロス
アンゼルス。そして冒頭でジョニー・デップ演ずる東部から来た
学生がロスの海岸で美女たちに取り囲まれる場面から始まります。

この1970年代のカリフォルニアと言えばヒッピー文化が隆盛を誇った
時代であります。ヒッピーといえば、ドラッグ。題名の「ブロウ」も
ドラッグを表す隠語です。

実は私の新婚旅行先はロスも含まれていました。ロスでこちらに移住
した友人の紹介でディスコ(今で言うクラブゥ)に行ったものです。
その時友人が、折角来たのだから「グラス(ドラッグの一種です)」
をやろうよ、なんて言われて。彼はそのディスコ内を色々歩き回った
のですが、残念ながら手に入れることは出来ませんでした。そんな
昔のシーンがこの映画を観て頭に過ぎりました。当時、我々の頭の
中には米国西海岸と言えばドラッグの世界という感覚がありましたね
(勿論、日本では違法でありましたが)。進歩的な若者が愛飲する
小道具という印象でありました。

こういう時代背景を知った上でこの映画を観ると面白いと思います。

そしてデップ演ずる若者はこのドラッグを試すことにより、女性を
得て、そして使う側から売る側にと生活が一変。マリファナにまで
手を染め、生産地であるコロンビアはメディジンという麻薬の都市
にまで彼は行くようになり、ロスの密売人として登り詰めて行きま
す。

そして彼のこの売人としての絶頂期に仲間のフィアンセであった
ペネロペ・クルスを仲間から奪い、一人娘をもうけて幸福の絶頂
を経験する。然しその後仲間からの裏切りに会い、全てを奪われ
最後は60年という刑期を食らい、刑務所で終わるという人生が描
かれます。

この物語も実在の人物をモチーフにして描いた映画のようであり
ます。題材としては大変面白いのですが、メデジン・カルテルと
いう、コロンビアの国家警察を凌ぐ武力を持ったマフィアを描いた
割には迫力のないシナリオが続きます。私自身、70年代の後半に
この都市ともうひとつのマフィアの巣窟であったカリという都市
に行ったことがありますが、現実の普通の生活の恐怖の方がこの
映画の上を行っていました。街中での銃声、爆弾騒ぎはしょっち
ゅうでしたから。

シナリオの悪さは細部にもあって、デップ演ずる主人公の幼い時代、
両親の不仲(これが父親の事業の破綻から来る貧困のようなので
すが)が彼の成人してからの人格形成に繋がっているという表現に
なっているのですが、余りに類型的。

この映画の評論なぞ見ると「悲劇」と捉えている人が多いのですが、
主人公が何回裏切られ刑務所に行ってもまた売人に戻る姿は、寧ろ
喜劇的に見えてしまいます。デップの演じ方はかなり淡々として
いて、人生のアイロニーと観たほうがしっくりくる気がしますが、
どうでしょう。

ひとつ不満があるのは、折角の世界の美女、ペネロペ・クルス の
登場が遅いこと(笑)それと撮り方が悪い。ちっとも綺麗に見え
ない。彼女のほかの映画と見比べて、これはとても残念であります。
私としてはとってもとっても不満です(爆)

この時代を知っている私としては、もっとロスのビビッドな風俗、
文化を出して欲しかった。でないと、何故米国でこれほどまでに
ドラッグが流行したかが全く分からないと思うのですが。題材が
面白いだけに残念であります。

やはり、ジョニー・デップはハリウッド映画には合わないなと痛感
した次第。


■この映画の評価:★★★☆☆
 (★五つが最高評価)





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2007年06月23日

映画(DVD): 007/カジノ・ロワイヤル 


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ご存知イアン・フレミング原作の英国情報局のヒーロー007の新しい
主役ダニエル・クレイグ を得てリメイクした作品。

この小説が出た時に全作品を完読したのですが、この「カジノ・
ロワイヤル」は記憶に薄いのです。確か007シリーズではなかった
記憶があるのですが。うろ覚えですが、映画を観ても全然記憶に
ないという事は、映画は映画の脚本でやっているということで
しょうね。

この映画はイタリアへ旅行した時に機内でみてしまって。でも、
画面が小さいので何か物足りず、はは、DVDで再度鑑賞。

ダニエル・クレイグがいいですね。初代007のショーン・コネリー
が余りに嵌ってしまったため、彼がシリーズを降りてからもう興味
を失くしてしまって。でも、ダニエルはあっていますね。初代が
ちと気障でありましたが、ダニエルのは本当に殺し屋という雰囲気
が出ています。元々007シリーズも米ソ冷戦時代の仇花であった訳
で、今更という感じもありますが、最新のスポーツ・カー、ボンド・
ガール、派手なアクション、ボンド兵器と大人になり切れない大人
のための小道具(女優さんは小道具じゃないか、失礼)がてんこ
盛りで、売れる要素は沢山。

ストーリーは例によってなんだか訳がわかりませんが、それでも
劇画的な処理でそれなりに楽しめる。但し、折角のカジノの場面の
緊張感が足りないのが難点。それとカジノ自体が中途半端な設定で。
あんな大金を賭けるような雰囲気じゃないのが悲しい。

私もカジノ大好き少年で、世界のカジノはラスベガスを除いて大所
は行っていますが、あんな雰囲気じゃないですよ。入るだけで
びびる(爆)出来たら、モンテカルロとかモナコのカジノで実写で
やって欲しかった。

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ボンド・ガールのエヴァ・グリーン。役柄もそうですが、シリーズ
で一番知的な美人さんですね。でも、私はあのアシュラー・アンド
レスが一番好きだな。

この映画も既に続編が決定しているとのこと。ダニエルのボンドが
定着するのは次の作品からでしょうね。新しいボンド・シリーズと
して期待が持てる映画でありました。

藤原紀華さんも、もうボンド・ガールの夢は捨てたのかな。新婚
生活もいいけど、英語のお勉強と演技のお勉強を頑張らないとね。
菊川怜も夢のようだけど、ちょっとあの演技じゃ無理じゃないか。
なんて余計な心配を。ダニエルと「007は二度死ぬ」で再び日本の
女優さんが彼と競演するのを夢見てますからね。

■この映画の評価:★★★☆☆
 (★いつつが最高評価)




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2007年06月19日

映画(DVD):イルマーレ

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あの「スピード」やら「マトリックス」で一躍ヒーローとなった
キアヌ・リーヴス がスピードで競演したサンドラ・ブロック と
再び甘く切ない次元を超えた恋に挑む2006年度の話題作。

なんて書いちゃったけど、実は2001年の同名の韓国映画のリメーク
版でありました。

不思議なことに2004年と2006年のパラレルワールドを経験した男
と女。あまり風景の芳しくない湖畔の建物に設置された郵便受け
が時空を繋ぐ鍵。下手をすると筒井康隆のSFコメディとなりそう
な設定を、二人の主演俳優がうまく演じています。

郵便受けという小道具がなんとも東洋的でエキゾチック。多分
これがアメリカ人の心を揺さぶってリメーク決定になったんじゃ
ないかと思うのですが、ストリー展開はちょっとロジック・エラー
があったりして不満が残ります。

もっと不満があるのは主人公のキアヌ演ずる建築技師の父である
著名建築家が建てたという舞台となる湖畔の建物。建築的に見て
全く興味を惹かぬつまらん建物だったりして。だから建物内部の
紹介も余りないの(笑)

SF大国、建築大国のアメリカで折角リメークしたのですから、
せめてこの点はもっと詰めてやって欲しかったのですが。彼女が
唐突に彼に唇を委ねるシーンも理解不能。

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実は私はサンドラ・ブロックが余り好きでないので辛い見方に
なっているかも。彼女も美人さんですが、どうも彼女を見ていると
カールセール麻紀を思い出しちゃうんですよね。それで淡い恋の
シーンものめり込めない(爆)

キアヌもワイヤーアクションがないせいかちょっと精彩がないよう
に思えたりして(笑)

ところで原題の「イルマーレ」なんですが、韓国映画の場合は
海辺の家のことと映画紹介で書いてありました。イタリア語の
「海」でしょうから、これでいいのですが。このアメリカ映画
では流石に湖であったので、二人が時空を超えて会おうとした
レストランの名前に変わっていたと思いましたが、どうでしょう。
あの五大湖のでっかい湖のほとりの建物ですから原作通り海辺の
家の名前で良かったような気もするけど。レストランでのシーン
はそれほど意味を持っていないので、違和感を覚えたりして。

甘いラブロマンスとちょっと涙がほしい方にはいい映画でしょうね。

■この映画の評価:★★☆☆☆
 (★五つが最高評価)




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2007年06月17日

映画(DVD) :ティファニーで朝食を


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ご存知オードリー・ヘプバーンの代表作のひとつ。この一作で
あのティファニーが超ビッグ・ネームになったという1961年作品。
今では日本にも支店が出来たため、その有り難味はなくなりまし
たが、昔はニューヨークに出張なぞすると奥様やら親戚に一番
安い装飾品を買って帰ると非常に喜ばれたものですが。

でも、最初あの店に入った時、てっきり食事が出来るのかと思って
思わずカフェはどこなんて、店員さんに聞いたりして。はずかし
かったなぁ(笑)

この作品の原作はあの偉大な作家、トルーマン・カポーティ
同名の短編小説であるということをご存知ですか。昨年話題に
なった「カポーティ」という彼を題材とした映画がありました。
この映画は是非見たかったのですが、残念ながら見過ごして
しまいました。それで、何十年か振りに彼の代表作の「冷血」
を読み返したついでに、この短編「ティファニーで朝食を」を
読んでみたのです。

原作のテイスト?

あははは、余りにも下らない作品で短編でありながらほんの
数頁読んだだけで投げ出してしまいました。あの「冷血」の
完成度と比べるととても読む気の起きない駄作です。まさか
同じ人が書いたとは・・・

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それに引き換え、この映画は全然筋は違うのですが、やはり
オードリーのあの可愛い美しさで、素晴らしいラブ・コメディに
仕上がりました。特に、原作と180度違うラスト・シーンで
雨の中、彼女がわんこを探すシーンは秀逸。今から見ると多少
「くさい」演出なんですが、もうオードリーの魅力に負けて
ため息が・・・

この映画の彼女のファッションはやはりジバンシーなんでしょうか。
映画の設定は貧しい娼婦(この言葉は語弊があるかも。今流に言え
ば「コンパニオン」かな)なのに、着ているものがいいのと、
オードリーのおかげで、貧しく見えないのがすごい(笑)

流れる音楽はマンシーニの「ムーン・リバー」で、映画の中で
オードリーがギターで歌っちゃうというおまけまでついて。こりゃ
おやじはめろめろになりますよ。マリリン・モンローの歌声も
いいけど、オードリーの歌もいい。やはり永遠の元祖「美少女」
ですね。

ところでこの記事の最初の写真ですが、映画でこんなシーンない
と思うのですが。変だな、見落とした訳ではないと思うのだが・・・
それと小説の原作に、オードリー演ずる主人公の紹介で、彼女の
名刺には住所がなくて「ただいま旅行中」と書いてあるという面白い
文章があったのですが、これは省略されていました。

ああ、それにしてもTVでしょっちゅう流れる某銀行のコマーシャル、
早くやめてくれ〜ぃ(爆)

■この映画の評価:★★★★☆
 (★五つが最高評価)




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2007年06月16日

映画(DVD):16 Blocks


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今「ダイハード4」で話題となっているブルース・ウィリス主演
の2006年の話題作。

ブルース・ウィリスのダイ・ハード・シリーズは余り好きじゃない
のですが、彼のシン・シティを観て彼に対する見方が変わりました。
あれ、この人結構いろいろな役もこなせるんだって(笑)

成熟してきたというのか、ダイ・ハードのあの強烈な臭さが払拭され
つつあるというのか、微妙な表現を見せられるようになってきまし
たね。やはり台本がいいと役者もそれだけの才能が発揮できると
いう事なんでしょうね。

今回彼が演ずるのは初老のニューヨーク市警の警察官。アル中気味
で、署内でも壁際族の存在。その彼が勤務外にも拘らず上司から
ある裁判の証人護送を命じられる。実はこの証人は警察署内の同僚
を糾弾する切り札的存在。それを知った悪徳警官らはこの証人の命
を狙うというお定まりのストーリー。

仕掛けは、留置所から裁判所まで「たった」16ブロックの距離。
悪徳警官という身内から狙われ封鎖され、まさに16ブロックという
限定された空間の中で、果たしてブルースは老いた上に、足も悪い
というハンディを乗り越え、無事証人を送り届けられるかという
サスペンス。

でもねぇ、たった16ブロックって言うけど、ニューヨークのこの
距離は結構あるのよね、なんて減らず口はしまっておいて。この
設定は如何にもアメリカ人が好きそうな設定であります。はい、
私もこういう単純明快な設定に弱いであります(笑)

ブルース演ずる老警官の哀愁がいいですね。饒舌な彼が殆ど喋ら
ない。彼の目の演技が、老いたる者の悲哀を感じさせていいんだな。
反対に助演のモス・デフ。彼がその分喋り捲る。いやぁ、煩いほど。
この対比も面白い。モスがちょっと間の抜けた役をうまく演じて
います。キャラクターとしてぴったりです。

そしてブルースが示す警察官の良心。むむむ、如何にもアメリカ的
であります。昔のニューヨーク市警を知る人は、例のジュリアーニ
市長
になって随分と良くなっていますので、こういう映画を観ると
感激して涙を流すんだろうな、なんて余計なことを考えたりして。

更に敵役の悪徳警官を演じたデヴィッド・モースがいい演技を
していますね。こういう渋い役者って好きだな。なんと言っても
抑えた演技の凄みがある。

ということで、この映画、大変拾い物であります。ブルース・
ウイルスに対する評価がまた上がりました。

ところで「ダイ・ハード」を観にいくか? はは、あれは結構です。
DVDで鑑賞します。大げさなアクション、爆発、ハリウッドの大作
映画はちょっと食傷気味ですので。

■この映画の評価:★★★★☆
 (★五つが最高評価)






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2007年06月13日

映画:パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド


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いま、封切中の映画だけに余り書くのもなんですが、やはりシリーズ
ものの最終作って駄作が多いというけど、そのジンクスは破れずで
ありました。

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もう映画の冒頭から頭が混乱。なんじゃ、なんじゃという具合で、
暫くしてやっとジョニー・デップ演ずるジャック・スパロウ船長が
登場。てな感じで、スパロウがちょっと隅に追いやられ、代わりに
オーランド・ブルームとキーラ・ナイトレイの恋の成就がクローズ・
アップ。ジョニー・デップのあのなんとも面白い演技を期待した向き
(斯く言う私もその一人)にはちょっとがくっとくる映画です。

もともと、ディズニーランドの「カリブの海賊」というアトラクシ
ョンそのものをモチーフにした映画なので、ストリー展開は荒唐無稽
というのは最初から覚悟の上ですが、この映画は無理矢理時間を
潰させたという感じ。3時間はちと長すぎたんじゃ。
でも、SFXというかコンピューター・グラフィックスで描く画面は
なかなか迫力あり、見るべきものはありました。でも、そのオン・
パレードと絶え間ない大音響って観る方は疲れるのよね。

ストーリーもご都合主義で作るとこんな記憶に残らぬ映画になるんだ
という見本になりました。兎も角、やたら死んだやつが生き返る。
どっかで基本原則とか作って置かないと、ウソでも筋を通しておか
ないとねぇ・・・

唯一の見所はスパロウ船長が死後の世界で大勢の自分の分身と会話
するシーン。本筋が詰まらなかったので、この場面だけはジョニー
の多くの分身の顔だけ眺めていました。面白いですね、皆それぞれ
違う表情と仕草をして。

あは〜、こんな場面しか褒めるところがないという、書いていて私
も疲れます。

更に疑問がひとつ。わざわざ映画の上映前に、館内に説明があって
「映画が終わっても直ぐ立たないで下さい」ですって。そしてエンド・
ロール終了後に二分間、エピローグがあるんですが・・・
なんですか、これは?もしかして続編が出来るんですか。むむ、この
映画が終わっておまけみたいのをつける手法が最近流行りみたいだ
けど、これって禁じ手じゃないの。ディズニーもちょっと落ちたな。


■この映画の評価:★★☆☆☆
 (★五つが最高評価)





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2007年06月12日

映画(DVD):ブラック・ダリア


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「L.A.コンフィデンシャル」の原作者であるジェイムズ・エルロイ
の「ブラック・ダリア」をテキストとした映画。「アンタッチャブル」
のブライアン・デ・パルマ監督がメガホンを撮った2006年度作品。

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私の大好きな女優スカーレット・ヨハンソン が出ているので、是非
劇場で見たかったのですが、暇がなく今回DVDで鑑賞。

原作の小説の書評はこちらですが、この長編をどうやって映画化する
のか非常に興味があったのですが、さすがパルマ監督、物語をうまく
紡いで緊迫感のあるシーンの連続で謎解きとどろどろとした人間関係
を鮮明に表現し切りました。この構成力は素晴らしいです。一部
原作と大きく違うところがありますが、大意は変わらず寧ろ見事な
整理と言えるかも知れません。

物語は1947年にロスで実際にあったブラック・ダリアと呼ばれた映画
女優志望の少女が惨殺された迷宮事件を取り扱っています。この事件
を追う、元プロボクサーの二人の警察官。そしてこの二人の警察官と
謎を秘めたヨハンサン演ずる美女との不思議な三角関係。更に、主役
である、ジョシュ・ハートネット演ずる警官と交錯する不動産王の娘
との束の間の恋愛があってと。輻輳する人間関係。これを主人公の
警察官が運命の糸に操られたかのように真相に近づいて行く。これ
を演ずるジョシュ・ハートネットがいいですね。若いんですが、なか
なかうまい演技を見せてくれます。

スカーレット・ヨハンソン もいいなぁ。この女優さん、「真珠の耳飾
りの少女」から好きになったのですが、出る映画出る映画、いい役を
貰ってますね。多分に親父キラーだな。とびきり美人じゃないけど
妙な、不安定な色気があってオヤジは心配になっちゃうのよね(笑)
いま封切られた「プレステージ」でも華を添えていますが、旬な女優
なんでしょうね。

映画はほぼ原作に沿って筋を丹念に追っていますが、いかんせん
あの長編を撮るには短すぎたきらいは否めません。原作ではもっと
登場人物各人の心の襞というものが描かれているのですが、そこまで
の深堀は残念ながら見られない。ましてヨハンソンの演ずる女性の
持つミステリアスさが描き切れていないのが大変残念でありました。

時代は第二次世界大戦が終わり、米国が高度成長を遂げ始めた頃の
ロスアンゼルス。メキシコからの移民との軋轢から暴動で治安に不安
があった時代(黒人問題はずっと先の話)、ハリウッドが隆盛を誇る
時代、いわばある意味バブルの時代であったのかも。

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この時代の風俗がよく描かれていますね。クラッシック・カーに
興味ある方は嬉しいだろうし、何と言っても男と女のファッション
がいいですね。何と言ってもキュートでセクシーですね。日本は戦後
の生活で汲々としていた時にです。私の大胆予想では、世界の
ファッションはこの時代のファッションに戻るな。
女性は殆どがタイトなスーツでセミ・ロングのスカートですが、
ミニ・スカートも既にこの時代にいたんだ!ちょっとびっくり。

もっとびっくりしたのが、ヨハンソン演ずる女性の住処の台所。L型
のシステム・キッチンがこの時代からありましたよ。それも中途
半端な長さじゃない。優に6M以上はあるんじゃないか。未だ電子
レンジのない時代。女性はこの時代はちゃんと料理していたんだ。
日本でシステム・キッチンが一般的になったのは1980年代の後半
ですよ。

と変なところに感心してしまった。

■この映画の評価:★★★☆☆
 (★いつつが最高評価)





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2007年06月11日

映画(DVD):リバティーン

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2004年度の英国製作作品。ジョニー・デップがパイレーツ・オブ・
カリビアン
の合間に撮った作品となりますね。あの海賊のイメージ
で観ると誰だか分からないかも。本当にこの人は役によって顔が
変わるので楽しみでもあるし、混乱することが多いです。

DVDの惹句によると、ジョニー・デップが自らこの作品を選んだとの
こと。彼らしい選択だと頷ける部分が多々あります。でも、冒頭と
エンディングで彼が「好きになるか嫌いになるか貴方次第」と言う
ように賛否が分かれる映画でしょうね。

物語は17世紀王政復古後の英国。未だ国王の政権が二大宗教の間で
揺れ動いていた時代と読むべきなんでしょう。清教徒による革命
であった訳ですから、相当な混乱期と捉えるべきなんでしょう。
多分、この時代背景を頭に入れていないとこのストーリーは容易に
理解出来ないかも知れません。

こうした時代背景の中で生まれた「鬼っ子」的存在のロチェスター
卿ことジョン・ウィルモット(ジョニー・デップ)。王の寵愛を受け
ながらも放蕩と詩作・劇作による政治・社会批判を繰り返し、その
才能が故に自らを破滅に追いやっていく悲劇を描いております。まさ
にデカダンスの権化みたいな人ですね。日本で言えば大正時代の作家
達なんですけど、ここまで徹底してはいなかった。

劇中、彼のモノローグの中で、自分はどんな女とも、男とも寝たと
言っています。その表現を借りれば、寧ろ言い古された言葉では
ありますが「時代と寝た男」という言葉がぴったりする。でなけれ
ば、当時の民衆が彼のグロテスクでエロチック、且つアイロニーに
満ち満ちた言動を支持した訳ではないと思うのです。

ジョニー・ディップで言えば彼の同じく英国の劇作家ジーン・バリー
を描いた「ネバーランド」が夢と愛をテーマにしたのと大きく趣を
異にしています(なんとこちらも同じ2004年製作、英国作品)。全く
同じ時期にタイプの全然違う劇作家(一方は詩人でもあるけど)
を演じ切っていたのですね。ここら辺にも彼の天才性が現れている。

映画の中で主人公が恋する舞台女優が「貴方は私に演技を指導しで
私を有名にするけど、実際に観客は私を観て感動する」という台詞
があります。まさにこれって脂の乗り切った現実のジョニー・デップ
の言葉なんじゃないかしら。彼がにんまりほくそ笑んでいるような
気がしてなりません。

ところで、映画の中で所謂敵役である王役のジョン・マルコヴィ
ッチ
という役者さん、素晴らしいですね。抑えた渋い演技でジョニー
と火花を散らしています。
観ていてぞくっとしますね。
更に全編に流れるノスタルジックなカメラワーク。いいですねぇ。
英国映画の良さをつくづく感じてしまう。

はっきり言って、こういうのを観ると、ジョニー・デップも「海賊」
とか「工場」とかより、この手の映画に数多く出て欲しいものです。
彼にはハリウッドより英国映画のほうが似合うなぁ・・・

■この映画の評価:★★★★☆
 (★いつつが最高評価)



■因みに多分この映画も参考にしていると思われるのですが、なんと
 あの大作家グレアム・グリーンが「ロチェスター卿の猿」という
 作品をものにしています。映画の中でも猿にまつわるエピソード
 が紹介されています。買いたいと思ったら、げっ、高い(笑)





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posted by belage at 13:03| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | FILM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月06日

映画(試写会):マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶


T0005294.jpg

いやいや、この甘いマスク。男が見ても痺れます。アラン・ドロン
と並び一世を風靡した二枚目俳優。ドロンが二枚目に徹したのに
対してマルチェロは三枚目的なところが、多くの人に愛された理由
ではないかしら。

昨日、この世界的俳優のオマージュ映画である「マルチェロ・
マストロヤンニ 甘い追憶
」と題された映画を見てきました。

彼との出会いは彼と言うよりフェデリコ・フェリーニ監督作品を
観に行くというのが一時ブームでありまして「甘い生活」という
不朽の名作に出会ったのが始まりだと記憶しています。この作品
は1959年でありますので、多分私が観たのは再上映の時でしょう。
高校時代であったか、大学時代であったか。

映画の内容はイタリアのヴィットリオ・ベネト通りに住まいする
金持ち連中の退廃振りを描いた映画なのですが、本当に「甘い
生活」そのものが描かれていて、世の中にこういう人種がいるんだ
とびっくりしたものでした。今の日本で言うと、ヒルズ族、ホリエ
モン達の退廃した生活もかくあったのかなんて思ったりして。でも、
映画はずっと上品な人種を描いておりましたが。

実は、この3月イタリアへ旅行した時に、家族とちょっと離れて
この「甘い生活」の舞台になったヴィットリオ・ベネト通りを歩い
てみたんですよ。はは、映画の雰囲気はどこにもなかったですね。
なんじゃこれは、てなもんでした。

今回観た映画の中で、このヴィットリオ・ベネト通りを誰かが語って
おりましたが、「あんな甘い生活で描かれたような現実はこの通り
には一切なかった。あれは、フェデリコ・フェリーニ監督の全くの
創作なんだ」という言葉にショックを受けましたよ(笑)

本作品は今年のカンヌ映画祭に出品された作品で、マルチェロの
二人の娘の述懐を中心に、彼と映画製作に関った大勢の人たちの
証言と当時の秘蔵フィルムをちりばめたドキュメンタリーであり
ます。二人の娘は本妻とカトリーヌ・ドヌーブの間に出来た子供
なのですが、二人とも親の礼賛で終始しています。勿論関係者も
一般的に言われていた「ドンファン的な、ルーズではあるが天才
俳優」というレッテルを「影で努力していた、自然体で生きた俳優」
という再評価しています。

全編この賛辞の言葉で埋め尽くされてしまっており、ちと鼻白ろむ
ところが多々あり、もっと実相に迫る発言があればと悔やまれます。
贔屓の引き倒し的な感じが否めません。

それにしても、競演女優の中で、クラウディナ・カルデナーレ
出てきましたが、その瞬間、一緒に観ていた人たちからなんとも
言えないどよめきがあったのはちと悲しかったです。一世を風靡
した美女も年には勝てない・・・
その彼女が「マルチェロがしきりにちょっかいを出してきたけど、
私は拒否したの」と言う場面があり、更に悲しさが増幅されてし
まった。私の大好きなアヌーク・エーメも出てきました。彼女幾つ
なんだろう。相変わらずの美しさ。美人と言われた人も、それぞれ
違う人生を歩んだんだとしみじみしてしまいました。

この映画はマルチェロを愛した人たちにはたまらないでしょうね。
でも、彼を知らない若い人にはどうかしら。多分途中で寝る人も
いるかも(笑)

私は青春時代を振り返るきっかけになりましたが。でも作品として
見た場合は、ちょっと物足りない。折角の題材を表面的にしか扱
っていないのは残念。それこそ「甘い映画」で終わってしまった。

それにしても日本では昭和30年代がブーム。この映画もそれと似た
時代。世界的な傾向なのかしら。この懐古趣味はやはり現代の閉塞
感の裏返しなんだろうか。

sweetlife.jpg sunflower.jpg

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(「甘い生活」「ひまわり」「バール・・・」の各ショット)

尚、この映画を記念して渋谷BUNKAMURAのル・シネマにて6月23日
から「甘い生活」「ひまわり」「BAR(バール)に灯ともる頃」の
三作が一挙に上映されます。いずれも世界に衝撃を与えた作品。
是非ご覧になられたら如何でしょう。勿論、私は行く積りです。


■この映画の評価:★★★☆☆
 (最高評価:★いつつ)





マルチェロについてはarigato5.jpg
posted by belage at 11:51| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | FILM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする