4月16日のNIKKEI NEWS MAILのこの記事。
◆バイクもエタノール・ブラジルで09年にも
【サンパウロ=岩城聡】米自動車部品大手デルファイは、エタノ
ール燃料とガソリンをどんな比率で混合しても走る「フレックス
バイク」向けの新技術をブラジルで公開した。同国の二輪車市場
をほぼ独占するホンダ、ヤマハ発動機などと実用化テストを完了
した。2009年にもエタノール独特の甘い香りを振りまくバイクが
街を疾走することになりそうだ。
開発したのは燃料タンク内のエタノールとガソリンの比率を瞬時
に測定し、エンジン内での燃料の燃焼をより効率的にするシステ
ム。既に四輪車に採用されている技術をバイク向けに応用するた
め、05年から小型化などを進めてきた。
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近年の原油高、環境対策として注目を浴びているエタノール
燃料。既に乗用車への技術開発は終了し、実用化されています。
残るバイクへの技術転用の加速が叫ばれている時のこの記事。
環境対策としてはかなり大気汚染に対する解決策になるものと
期待され、京都議定書の導入に弱腰であった米国もこの技術に
関しては前向きに取り組んでいるという大きなメリットがある
技術です。
日本は現在のところトヨタのプリウスに代表されるガソリンと
電池を併用するデュアル・タイプの技術で一歩リードしていま
すが、ブラジルを中心とする米州では寧ろこちらのエタノール
車で環境問題の解決を図ろうとしており、自動車産業の環境
対策はますます多様化の傾向にあります。日本は資源輸入国と
いう特性、米州はエタノールの原料となるサトウキビ、トウ
モロコシの資源輸出国という特性を生かしたそれぞれの技術を
競うことになりそうです。
でも、ここで困った問題が噴出しています。既にブラジルが
サトウキビから抽出したエタノール燃料を実用化して砂糖の
価格が高騰、そして世界的な先物商品であるトウモロコシも
エタノール生産の波を受けてこのところ倍以上の高騰を見せて
いることです。
期を同じくして4月16日のNHKのクローズアップ現代で「穀物が
消える?人VS車争奪戦」というショッキングな題名の特集
を組んでおりました。
もともと、トウモロコシは先にも述べたように先物商品として
投機の対象となって値動きの激しい商品でありました。先に
世界的に原油の価格を押し上げたヘッジファンドの資金が原油
からこの商品に資金を向けている傾向もあります。
トウモロコシって非常に巾の広い利用価値を持っている素材
なんですよね。勿論そのまま食べてもいいし、粉末で水で溶い
たりパンにしたりでアフリカでは貴重な食料でもあります。
でんぷんやら油としての利用も貴重です。更にもっと貴重な
使い方は飼料。我々が口にする殆どの肉材の動物はこれにより
飼育されていると言っても過言ではありません。日本にとって
やっかいなのは資料用のトウモロコシは世界一の供給国米国から
輸入しているということ。現在でも中国、インド等々の発展
に伴う需要増でトウモロコシの価格は数倍に跳ね上がってい
ます。これにエタノール原料として、まさに車に食われるよう
になると、日本の農業は壊滅状態となる可能性があります。
まさに人が食うのか、車が食うのかという極めて重い命題が
早晩我々に突きつけられるのは必定のようです。
古い物理学の言葉で「作用・反作用」という定理があります。
良かれと思う技術もその波及効果が思わぬところに出てくる。
一方でアマゾン流域は米国の牛肉需要に対応するために毎年
四国と同じ面積の森林が消失して牧場に変わっているといい
ます。これにトウモロコシの作付面積の増加が加わると・・・
温暖化防止の施策がかえってそれを増長することになる可能性
もあるという極めて皮肉な現実が露呈されていく。
やはり環境問題は部分で判断してはいけない、全体最適の論理
をよくよく考えないといけないと思った記事でありました。
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ラベル:エタノール燃料