(前号の続きです)
今回の在日外国人の避難に関し、思い出すのが1990年8月に起こった
イラクのクエートへの侵攻。これが湾岸戦争の発端でありました。
当時ボクはアラブの小国におり、その年の5月辺りからイラクのサダム・
フセインの動きが不穏なものとなり、世界の各国はいつ彼がどこに行動
を起こすかが焦点となっておりました。
当時のことを思い起こすと、ボク等駐在員も上記の一点に関して自国で
収集できる情報をかき集め、本社に細かいことまで報告をあげていました。
特にボクの場合は、当時のイラクの軍事技術の殆どはソ連経由のもの
であったことから、旧共産圏の大使館筋の情報を集めておりました。
情報そのものは当然玉石混交。現地ではそのウエイト付けは出来ません
ので、生情報として東京本社にあげていた訳です。当然、他諸国にいる
駐在員からも同様に膨大な量の情報が本社に集まっていたと容易に
推察出来ます。
結論から言うと、フセインは同年8月2日にクエートに侵攻しました。
後日談になりますが、本社はこの前後の日を既にXデーとしていた
そうで、湾岸諸国に点在する社員の避難命令を同日に発しています。
かなり的確に情報を掴んでいた訳ですが、基本的には英国情報が
一番正確であったそうな。
この迅速な社命がなされたのは、その前にあったイラン・イラク戦争で
愈々になった時、陸路でシリアへ社員を退避させる等、日本企業は大変
なオペレーションをしており、この反省に立脚した適切な行動であったと
思います。
前号で日本政府はパスポートで邦人旅行者、駐在者の安全を当該国
に要請をしていると書きました。
ですが、戦争のような非常時にそれを期待することはまず無理。また
残念ながら日本政府は専用機を邦人救出のため、戦争或いは紛争
地域に飛ばすことも出来ません。米国をはじめとする西欧諸国の自国民
に対する扱いと比較して唖然としますが、これが実態です。
実はこの時、ボク自身はクエートから遠く離れていた国にいて、戦禍に
関してはかなりノンビリした考えを持っており、会社の避難命令にも
拘らず8月10日まで避難をしないでおりましたが、その日東京から
「バカ者!即刻避難、社長命令、でなければ即刻解雇」と脅され、着の身
着のまま同地を離れ12日には帰国しております。
こんな経験からすると、今回の震災・原発事故で大勢の外国人が一斉に
大量避難されたことは、上記の全く逆バージョン。速攻でこういうオペ
レーションがなされたことは、その企業の健全性を証明するものであると
ボクは思います。
災害の規模・範囲が不確かな故、最大の被害
想定をして避難をさせる。
これが外国に社員を送り込んだ企業の鉄則です。遅れてしまって
ばらばらになったら、全員を無事避難させることは不可能に近い
くらい困難になるという発想です。
ボクの経験からすると、撤退ではなく一時避難と言っても、いつ戻れるか
分からぬ状況は会社にとっても大変な犠牲を生じます。莫大な避難費用
と一番重要なのは残ったローカル社員(今回の場合は日本人社員)の
給与と諸経費をどうマネージするかという問題があります。
更に最悪の場合はこうしたローカル社員も最終的に避難という
ケースも考えられ、その時のオペレーションを外地から遠隔操作で
なすということは、想像される大混乱を前提にすると不可能です。
ということで、今回の外国人の大量避難は冷静に見ると非常に高度な
適切な判断であったとボクなぞは驚嘆している次第です。
因みに、海外にいた者として一言いえば、最悪時にパニックに陥ったとき
言葉も理解出来ない場所にいたらまず避難なぞ不可能です。便数の
限定された飛行機の座席確保なぞまず出来ません。大体、チケットを
買うこと自体も出来ず、もし家族を連れていたら脱出不可能ともなりかね
ません。
今回の場合、某欧州系のファストファッションの最大手の企業は
邦人を含む社員だけでなくその家族まで関西に引き纏めたと聞いて
います。流石です。もうこういう会社に入った方たちは幸せですね。
誇りにしてもいいと思いますよ。日本企業ではまず出来ないことです。
余談ですが、ボク自身は海外駐在は数回していますが、平常時から
安全と思われる近隣国への飛行機のオープンチケットを常に身につけて
おりました。
海外におられてこのブログをお読みの方で、色々なリスクが考えられる
場合は是非これは励行してくださいね。
(了)
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Phoenix 東北&関東
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はい、外国に住んでいる者ですが、オープンチケットを持っていません。
うちの場合は、日本よりも夫の職場に頼ることになると思います。
おかげさまで今のところ「天国」みたいな国ばかり住んでいますので、ちょっと平和ボケしていますね。
この経験を生かさない手はありません
ご主人の会社はその点かなりのノウハウが
あるから大丈夫ですよ。いざとなったら、国連軍がありますから。
天国みたいなところですが、テロは可能性
はあるので、ケニア同様にそちらは気を
付けられた方がよろしいでしょう。
停電、水なし、食料なしの国に長かったので、
今回の事態にはかなり抵抗力があります(笑)